ナポレオンの知恵、松下幸之助の知恵

高度成長期、まだ松下幸之助氏ご存命中のころ、彼の財政に対する知恵をなにかで読んだ記憶がある。国の歳出を歳入の8割とか9割にとどめよ、というのだ。そして残りを持ち越す。運用していもいいとあったのかもしれない。そうして1割を残していけば、10年たつと、税金をとらなくてすむようになる、といった内容だったように思う。

10年たてば、1割づつ残したものが10割になるのだから、1年間は税金をとらなくても済むけれど、その翌年にはないわけだから、なんだかもっと数字は違っていたような気もするが、いずれにせよ、高度成長期で、がばがば入る税金を、使い切らずに残しておきないさい、という趣旨だった。

ついでに家計も同様に、収入をすべて使うことなく、何割かを貯蓄にまわし、すくなくとも収入1年分に相当する金額をためておきなさい、そうすれば、いざというとき、あわてなくてすむという話だった。

国庫はともかく、私は安い給料で、月末になると、財布をひっくり返して、10円貨でもあればうれしいという生活だったので、とてもできないと思っていた。しかし、松下氏の言われることは、記憶に残り、給料が上がった時、その分を貯蓄にまわしたのだった。

ナポレオンの本を読んでいる。その中に興味深い部分があった。ナポレオンの最初の妻ジョゼフィーヌは、浪費家で、いつも借金にあえいでいた。子どもができず、離婚されるのだが、その慰謝料というのか、離婚後の生活費は年300万フランというものだった。この金額が今いくらか、わからないが、ナポレオンが皇帝として、国庫から受け取るお金は1200万フランで、またエルバ島へ流されることが決まったとき、その手当がやはり年額300万降らんだった。

相当な金額と思うけれど、それでも借金をしてしまうジョゼフィーヌに対し、いさめる手紙を書いている。150万フランの生活をしなさいというのだ。残り半分の150万フランを貯金すれば、10年後には1500万フランになって、孫たちにいい財産わけをしてやれるじゃないか、というわけだ。

この半分貯金という考えは、どうもナポレオンの母親レティツィアからきているようだ。皇帝の母として、彼女は100万フランを受け取っていたが、それを使いきることなく、質素にくらしていたらしい。皇帝は、母親に、毎年100万フランはもらえるのだから、もっと豪勢な生活をするように、とこちらでは逆に、使うことをすすめたらしい。そうすると、母親は、200万フランいただけるのなら、100万フランの生活をするけれど、というものだったとか。

実に堅実な母親だ。浪費家の嫁ジョゼフィーヌとそりが合わなかったのは当然だ。松下氏のことも思い出し、すっかり感心したのだが、いざ、現在の収入で、半分の生活となると、それは無理そうだ。1割残すことができるかどうか、外食をせず、つましくやればできないこともないかも。

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