借金も財産のうち

「借金も財産のうち」と今もいうのだろうか。昔は借金をするというのは難しかった、と思う。銀行の個人貸し出しはないし、消費者金融というのもなかった。

借金をするのは、親戚・知人からだったのだろう。親の扶養家族であったときは、自由になるお金もないけれど、借金をする必要もなかった。

初めて借金をしたのは、住居を買おうと決心したときである。ちょうど、銀行が個人むけのローンを始めていた。しかし、女性にはなかなか貸してくれないとか、勤続年数が5年は超えていなければならない、返済金額が年収の何割(忘れた)内でなければならない、といった制約も多く、いくらかは借りることができたけれど、必要な金額が調達できなかった。

残りをどうするか、母親、兄などから借りたけれど、銀行に住居(中古マンション)を担保につけられているし、他に担保になるものはなかった。私という人間に対する信用だけである。兄は一度、身うちに貸して、返済されなかったという経験もある。貸してくれるかどうか、心配だった。

銀行への返済は、借りた金額が返済能力をきちんと考えた挙句のことであるから、無理はなかった。しかし、母や兄への返済もある。信用だけが担保のときに、返済を滞らせてはならない。最初の数年間は返済しか頭にない生活だった。その時の苦しさから、借金はもういやだと思い、それからローンも含め、したことはない。

高齢者といわれる年齢になって、幸いなことに借金はない。どんなに気持ちが楽なことだろう。収入は少なくても、借金返済がないのはうれしい。

仕事の関係で、現役世代の相談にのることもある。今、借金をするという大事がいかにやさしいことか。住宅ローンも、(昔の)住宅金融公庫ですら35年のローン期間を設けているし、銀行もそうらしい。たとえば、35歳で家を買おうとして、2000万円のローンを組む。35年のローンだと、条件次第だけれど(ボーナス併用)、そう厳しい金額ではない。

しかし、数年前のリーマンショック、今回のアメリカ発世界株安、いろんな事件に伴って、経済状況は変わる。それより35歳で35年のローン、70歳まで収入が変わらずあると予定していいのだろうか。
病気、リストラ、離婚、さまざまな悪条件が絡んで、ローンの返済のために、消費者金融をたよって、泥沼に陥ったり、自己破産をせざるを得なくなったりした人もいる。

個人の問題だから、借金するな、とは言えないが、身の程を知って、身の丈にあった生活を、と言ってやりたい。
今回のアメリカにしても、借金を恥とせず、居直っているのが、そもそもおかしいのでは?と思っている次第だ。


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