仰げば尊し

3月は卒業式の月、「仰げば尊し」が聞ける月である。ところが、このごろはあまり歌われないという。我々の世代は、この歌を聞くと、ウルウルになったものだ。先生なんて、ほとんど意識していないのに、「わが師の恩」と歌えば、先生にいたづらをしたことを申し訳なく思ったりした。

この「仰げば尊し」と「ふるさと」は、外国にいたとき、本当に歌えば涙だった。しかし、考えてみると、いづれも故郷を出て、立身出世しなさいというような内容だ。「身を立て、名をあげ」と言われても、もう老残の身、そこまでいかなかったな、と慙愧の念にかられる。

時代遅れの歌だなと思いながら、この復古調の、文語体の歌詞がなんともいえない。背中をぴんと伸ばし、姿勢正しく歌えば、たちまち、50年は昔に戻ることができる。
昨年、故郷に帰省したとき、思い立って小学校、中学校、高校と訪ねてみた。3校とも歩いて10分以内にある。一番遠いのが小学校なのだ。
もう半世紀も前の思いでなど、残ってはいないし、学校もそのままではない。小学校では、私が竣工式であいさつをした新校舎が、一番古い校舎となっている。

小学校、中学校などでは何を勉強したのやら、先生の名前も覚えていない。校歌もきちんと歌えない。それなのに、この「仰げば尊し」はしっかり記憶に残っているのだから、すばらしい。
「今こそ別れめ、いざさらば」でもいつかは故郷に戻りたい。

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