逃亡者

17年の逃亡生活を経て、平田信(まこと)が自首してきた。こんなことがあるのだ、と奇妙な印象をもっている。
この狭い日本で、17年間も逃げ延びられたとは、不思議で仕方ない。

その昔、アメリカのテレビ連続ドラマに「逃亡者」とうのがあった。妻殺しの嫌疑をかけられた医者が、逃げて逃げて逃げまくる番組で、毎回、捕まりそうになりながら、最後の瞬間で、また逃げることができるのだ。
毎回、夢中になって見ていた。

また、もう細かい事実は忘れたし、時効にもなってしまった事件なのだが、モハメッドを風刺した小説(原文は英語)を日本で翻訳した学者が、筑波大学で殺害された。その殺害犯人が、とうとう特定されることなく、時効となってしまったのだが、この事件の捜査に私もひっかかったことがある。

もう30年以上も前のことだろうか。仕事を終えて、自宅(集合住宅)に戻ると、2人の男性が私を待っていた。どうやって私を特定したのか、わからないが、「何々さんですね」と声をかけられた。声のかけかたが柔らかかったので、特に警戒心を持たなかったが、オウムや北朝鮮の拉致だったりすれば、こわいものだ。

警察手帳を示し、「ちょっとお話を伺いたい」と言う。何についてか、当時は少しは違法駐車もしたことがあるし、警察から聞かれるようなことをしでかしたか?と一瞬、こわくなった。「何々村に別荘をお持ちですよね」と続く。
「その別荘のことで」というので、違法駐車もスピード違反も関係ないとわかって安心した。警察の質問は、「別荘のカギをだれかに貸したことはありませんか?」ということから、「別荘地で盗難事件が頻発しているから」との説明があった。

当時はまだ別荘を作って数年たったかたたないか、だから鍵は家族(母、弟)、それに友だちも持っていた。その事情を説明すると、そうですか、と簡単に終わる。それからが彼らの聞きたいことだった。殺された人の名前を出し、「ご存知ですよね」とくる。名前は新聞などで知っていると言うと、「個人的にもご存知なのでは?」とくる。全く知らなかったので、そう返事をすると、その人の著書の1冊に、私の名前があったという。つまり、著書のあとがきかなにかに、資料提供か協力者として、名前が載っていたらしいのだ。

何をして、謝辞の対象になったのやら、記憶もないくらいだから、個人的な知り合いではないことはわかったのだろう。そのあと、関連の質問もあったけれど、事件と結びつかないと判断されたのか、お定まりの「なにか思いだされたらご連絡を」ということで、彼らは引き揚げていった。

どんなに細い糸でもたぐりよせようという警察の捜査の一端だった。それから、その事件については関心をもってみていたのだが、結局、犯人についても何もわからないまま、外国人らしいという説があったけれど、時効となった。

こうやって、犯罪がおきても、わからないままで終わるというのは起きるし、福田なんとかという女性のように、時効直前で逮捕されるケースもある。
しかし、平田信については、手配書があんなに日本全国に貼ってあるにもかかわらず、逃げおおせたということに、驚いている。今住んでいるところも、山林の中だし、人が住んでいるのか住んでいないのかわからない家もたくさんあるが、少なくとも管理事務所があり、散歩をする人もいるから、なにかあやしいとなれば、管理事務所が調べたり、駐在所からくることもあるだろう。

事実は小説より奇なりのよい1例になりそうだ。真相解明を待っている。

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