フランスのバカロレア・カンニング

毎年6月、フランスではバカロレアという試験が行われる。バックと省略されるが、この試験をうけなければ、大学など、高等教育機関へすすめない。日本のセンター試験のようなものだ。しかし、バックのほうが歴史は古い。
創設されたのは1808年、当時は受験者も少ないし、合格者はもっと少なくなる。1924年に、女性もバックを受けられるようになった。

2011年のバカロレアで、日本と同じようなカンニングが行われたようだ。新しいテクノロジーでのカンニングというから、おそらく携帯電話を使ってのことだろう。バカロレアでも最も難関のSコースの数学で行われたとのことだ。同じSコースの英語と物理の問題でも漏洩の疑いがあるようだ。

現在では80%以上の合格率のバックだが、日本のセンター試験と違い、記述式の試験である。記述式の試験に合格すると、口頭試験がある。哲学などの科目もあり、なかなか難物という。

今年は合格の平均点が、このカンニング事件のせいで、少し下がり、20点満点で9点になったという。よい点をとると、mention tres bien(よくできました)という評価を得、シアンスポ(政治学院)などへの無試験入学ができる。

フランスの学歴は、バック+3とかバック+5といった形で表現されることが多い。大学は学士号を得るまでに3年だし、5年で修士、8年で博士号となる。大学は必ずしも評価は高くない。グラン・ゼコールという大学の上をいく教育機関があるからだ。

大学は無試験で入学できるが、これらのグラン・ゼコールは選抜試験がある。大変難しいもので、ENA(国立行政学院)というグラン・ゼコールの最右翼を占める学校を卒業した知人は、入学試験のための勉強で、痔になったと言っていた。それほど長時間、机にかじりついて勉強したということだ。

私の代父は、80代後半の老人だが、エコール・ポリテクニクという理科系のグラン・ゼコールを首席で卒業している。そのことは大きな自慢で、ことあるごとに口にでる。またこの学校を出た卒業生の紐帯は固く、カマラド(仲間)と称し、いくつになっても仲がいい。

彼に言わせると、将来のことを考えると、大学ではなく、グラン・ゼコールに進学しなければならない、という。孫が2年のプレパ(グラン・ゼコール受験のための準備クラス)のあと、文化系の最高のグラン・ゼコールであるエコール・ノルマル・シューペリユールの受験に失敗、結局、パリ大学のソルボンヌ校に入学した。このやむを得ない転身を、とても残念がっていた。

フランス人が理屈っぽいのは、バカロレアに哲学の科目があるからだという。

日本にフランス、いづれも携帯電話でのカンニング、世の中、進んだものだ。

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