老老介護

パリに住む代父から手紙がきた。いつもは日本語で書いてくるが、今回はフランス語である。怠け病にかかったことと、代母の世話などで時間がないと言っている。

代父・代母ともに今年89歳となる。昨年米寿のお祝いをした。フランスでは切れ目の年(80歳、85歳、90歳など)にお祝いするが、米寿などはない。日本では重要なお祝いだからと、なかば強引にお祝いの席を設けた。

めずらしく愚痴をこぼしている。代母はずいぶん以前から、目があまりみえず、また背中をいためて、常に痛みがあるらしく、長く歩くことができない。1昨年は夜中のトイレで、右腕を骨折した。それ以来、ベッドのそばに簡易トイレ(中世のもの)をおいてある。

彼が書いてきたことでは、朝、着替えを手伝う。とくに時間がかかるのは、ストッキングをはかせることだという。足を保護するための特別のストッキングで、あまり伸縮しないものなので、着脱に時間がかかるのだそうだ。

そのあと買い物に出かけ、パンや生鮮食料品などを買う。お料理はお手伝いさんが平日の午前中はきてくれるので、彼女が昼ごはん(1日のうちでもっとも御馳走を食べる)を作ってくれる。

昼ごはんのあと、代母は昼寝、代父に少しフリーの時間ができ、その間にヴォランティアの仕事のために外出したりする。そのあとは、代母のために、読み聞かせをするそうだ。去年、私たちが滞在したときは、「風と共に去りぬ」を読んでいたが、今はトルストイの「戦争と平和」を読んでいるそうだ。2200ページもあると、嘆いている。まあ、なんとむずかしい、長編を読むことよ!!!

彼は大会社の社長や会長を経験して、自分のために人が働くことはあっても、自分が人のために働くことに慣れていない。自分の時間を束縛されることをなかなか受け入れられないでいる。

代母が完全に動けないのなら、介護の人を雇うことにもなるだろうが、自宅内であれば、どうにか身動きができる。
今は自分ができるけれど、89歳ともなれば、いつできなくなるか、運転もおぼつかなくなるだろうし、自分にはだれが手伝ってくれるだろうか、と嘆き節である。

行ってあげたい。日本の娘がいますよと言ってやりたいけれど、つれあいもなんだかおぼつかない状態にあって、長くは留守にできない。

日本よりよほど条件的に恵まれていそうなフランスだし、経済的に問題のない夫婦ではあるが、老老介護はこたえているようだ。

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