家訓(福澤心訓)

小さい時、我が家の茶の間に福澤心訓が貼ってあった。どういうものかといえば、
ー世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。
ー世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。
ー世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。
ー世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。
ー世の中で一番尊いことは、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。
ー世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。
ー世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。

これが家訓かといえば、そうでもないようだ。というのも、この心訓を覚えていたのは、3歳上の姉と私だけだからだ。長姉に聞き合わせたら、知らなかった。5歳下の弟も覚えていないという。

3歳上の姉が自分の子供たちの家にこの心訓を貼っておきたいと、私に問い合わせてきた。
福澤諭吉の言葉とは覚えていたが、ほとんど忘れていたので、図書館に問い合わせて調べていただいた。福澤諭吉の言葉と確定できるものではないらしい。そんなことは姉はかまわないという。

これは私にとって、姉からのからかいの種だった。姉がなにか言って、それを知らないと、「世の中で一番みじめなことは、人間として教養のないことです」と言われる。姉のかわりに家事の手伝いをし、それを告げると、「人のために奉仕して、決して恩に着せない事です」を言う。

でもよくできた言葉だと思う。姉とすっかり共感し、墨書したものを送った。姉は子供たちに渡したらしいが、はたしてリビングルームあたりに貼ってあるだろうか。

モーゼの十戒もいいが、福澤心訓は日本的で、少しアナログで、ぴったりくる家訓である。

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