新大統領とその女友達

5月6日にフランスの新大統領が決まり、その3日後に私はフランスに着いた。新大統領のことはまだまだホットな話題である。
私の代父は90歳の元大会社会長、がちがちの保守である。さぞやオランド新大統領批判を聞かせられることだろうと思っていた。ところが、静かなものである。ミッテランの時と大違いだ。1981年、もう21年前になるが、ミッテランが現職ジスカール・デスタンを破って当選したとき、私は喝采を叫び、彼は苦虫をかんだ顔をしていた。社会主義がいかに駄目かを、現実の例をあげながら説明してくれるのだが、私は体制打破、社会正義の実現といった、若い、未熟なスローガンだけを唱えて、聞く耳をもたなかった。とうとう説明をあきらめた彼は、「ミッテランですら社会主義を捨てたのに、君は世界最後の社会主義者かもしれない」などと言ったのだった。

その後の世界の動きをみながら、彼の説に正当性をみた私は、徐々に転向したのかもしれない。社会正義や格差是正というのは、あくまで信奉しているけれど、それを実現するためにとるべき施策がはたして社会主義でいいのかどうか、疑問をもつようになってきた。

それにしてもサルコジは評判が悪すぎた。マルセイユで会った神父様も、サルコジには投票しなかったと言われた。サルコジを賛美したのは、企業を売却して悠々自適の生活をしている60歳のカップルだけである。いわゆる金持ち優遇策の恩恵にあずかった族である。

ソルボンヌで博士コースに通う代父の孫は、完全にオランド支持であった。オランド氏が選挙公約であげていた政府の男女同数が可能かどうかを、まだ組閣前に質問すると、可能かどうかより、その思想は正しいし、社会党にはそれだけの人材(女性)がいると思う、との返事であった。
フランスの日刊紙購読をやめて3年、すっかり実情にうとくなっていた私は、社会党で知っている女性といえば、ミッテラン時代に活躍した女性エリザベト・ギグー、現第一書記のマルティーヌ・オブリー、オランドの前パートナーのセゴレーヌ・ロワイヤル、などである。21年の時間は大きい。

話題のcompagneであるValerie Trierweiler(ヴァレリー・トリユルヴァイレール)についても、保守的なフランス人がどうみているか、興味があった。大統領の女性問題については、ミッテランもそれに続くシラクもいろいろあったし、昔には腹上死した大統領だっていたのだから、そう問題にしないのだが、結婚していない女性をどう扱うのか、儀典上も難しかろう。

私の周囲は、敬虔なカトリック教徒が多いので、結婚していないファーストレディに困惑していた。しかし、大統領は最高位、だれもそれをいけない、とは言えない。受け入れるしかない。
就任後、すぐにG8のためにアメリカへ行き、そこでの報道はfirst girl friendとなっている。ガール・フレンドね!日本でうけるガール・フレンドの語意を思うと、軽いなと思ってしまう。

でもヴァレリーは堂々としている。オランドの同伴者としての活動のほか、自分の職業であるジャーナリストの仕事は続けるとか、そして、どの程度仕事をすることが可能であるかどうかは別として、パリ・マッチ誌からの報酬はちゃんと受け取るのだそうだ。これについては、大学院生の孫も、ふーんと納得できない表情をみせていた。

ナポレオンの妻ジョゼフィーヌは、戴冠式の前夜、あわてて宗教上の結婚式をあげた。あるいは、オランドもその例にならって、どちらかの住居のある役所で、結婚の手続きをするかと思ったのだが、あくまで事実婚だとか。

世の中、変わった。もし、オランドがヴァチカン、イギリスなどを訪問するとき、ヴァレリーが同行するのか、同行したら、どう扱われるのか、今後の興味の焦点である。


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