就職試験

就職のための試験を受けたことが3回ある。最初は大学卒業前、某新聞社の入社試験だ。記者になりたいと思った。書くことが好きで、好きなことを職業にできると思ってのことだった。
筆記試験で落ちた。なんの準備もせず、万に一つの幸運と、自己過信だけで受けた試験は、きっと受験者の最低だったことだろう。

2番目は、事情があって、東京へ出てきたあと、兄の家に居候をしていた。故郷に帰る気はなかったので、何か仕事を探すことになった。新聞広告で、ある上場会社が事務員を募集していた。高卒の募集であったが、その会社は親せき筋が重役をしていた。履歴書をもって試験日に会社へ行き、筆記試験を受けた。とても簡単で、すぐに面接ということになった。

「この会社を受けようと思った理由は何ですか?」という質問に、「遠い親戚にあたる人が重役をしているというので、会社の名前を知っていたからです」と返事したら、重役の名前を聞かれ、それで面接は終わってしまった。

はたしてよかったのか、悪かったのか。その夜、兄に重役から電話があり、「試験の結果はいいのだけれど、縁戚の人間をいれるわけにはいかないので」と断られた。コネがあっても駄目なケースとなった。

3番目の試験は、ある外国の機関である。外国語の学校で見つけた求人だった。試験は一斉にではなく、個別のものだった。新聞記事を翻訳し、その結果をみながらの面接であった。

採用された。試用期間を終え、正式に採用されたあと、試験官になった人にどうして採用されたかを聞いたことがある。その答えは次の通りだった。
新聞記事の翻訳を、きちんと新聞の文章に直していたこと。日本語力があることを見込んだ。
それとは別に、ドアの開閉をきちんと最後までしていたこと、などをみた、という返事であった。

部屋に入る時は緊張しているから、まだドアが閉まるまでみているかもしれないが、終わって出たときに、ガタンと音をたてずに、ノブがもどるまで気を使っているかどうか、気配りがきくかどうかをみたのだそうだ。

そうしてみると、何が幸いしたのかわからない。書くことが好きで、いろんな文章を書いてきた。それが役に立ったというわけだ。
ドアの開け閉めについては、母から「後ろ手に閉めるな」とうるさく言われてきた。ドアのあるような家ではなく、障子やふすまだったが。

最後の就職試験が結局私の人生を大きく変えた。これから就職試験を受けるひとたちの健闘を祈ります。
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